エビデンス

Evidence
2022/04/25
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ケイ素摂取によるラットの骨・血管の応力ひずみの解析

一般社団法人 電子情報通信学会 信学技報

THE INSTITUTE OF ELECTRONICS, IEICE Technical Report

INFORMATION AND COSALUNICATION ENGINEERS MBE2014-7 (2014-5)

ケイ素摂取によるラットの骨・血管の応力ひずみの解析

河村 洋子 横田 康成†† 野方 文雄†† 寺沢 充夫††† 上条 中庸†††

岡田 憲己††††

†岐阜大学人間医工学研究開発センター 〒501-1193 岐阜市柳戸1-1

††岐阜大学工学部 〒501-1193 岐阜市柳戸 1-1

††玉川大学工学部 〒194-8610 東京都町田市玉川学園 6-1-1

††††株式会社 APAコーポレーション 

E-mail: †,††{yokokawa,ykt}@gifu-u.ac.jp, †††terasawamitsuo@yahoo.co.jp

あらまし ケイ素摂取量と骨密度(BMD)に密接な関係があると指摘されている.さらに,ケイ素の摂取は,動脈硬化を抑制し,免疫機能を向上させることも示唆されているが,これまで客観的な検証はほとんどされてこなかった.そこで,本研究では,ケイ素及び希少糖の飲用摂取によるラット13匹の骨と血管の引張試験を行い,応力ひずみ特性を解析し,骨と血管の力学的強度を評価した.その結果,ケイ素摂取群,希少組含有シロップ摂取群,ケイ索希少糖含有シロップ摂取群の血管の最大応力時のひずみ(伸び)は,コントロール群と比較して,有意に大きいことが分かった.また,ケイ素摂取群の焼骨の破断時の破断応力は,コントロール群より有意に大きく,希少糖を飲用したラットの尺骨橈骨の破断時の破断応力は,コントロール群より有意に大きいことが分かった.

キーワード ケイ素摂取,骨,血管,応力・ひずみ,希少糖

Analysis of Stress-Strain of Rat’s Bone and Blood Vessel

with Dietary Silicon Intake

Yoko KAWAMURA,Yasunari YOKOTA††,Fumio NOGATA††,Mitsuo TERASAWA†††,

Tadanobu KAMIJO†††, and Kenmi OKADA††††

†Research and Development Center for Human Medical Engineering,

Gifu University Yanagido 1-1, Gifu,Gifu 501-1193 Japan

 ††Faculty of Engineering, Gifu University Yanagido 1-1, Gifu, Gifu 501-1193 Japan

†††Tamagawa Academy(K-12)&University, 6-1-1 Tamagawagakuen, Machida,

Tokyo 194-8610 Japan

††††APA corporation Co.,Ltd, 60-11 Tokuhara, ishii-cho, Anjo, Aich 444-1201 Japan

E-mail: t.t{yokokawa,ykt}@gifu-u.ac.jp, titterasawamitsuo@yahoo.co.jp

Abstract It has been indicated that there is the close relation at silicon intake and bone mineral density (BMD). In addition, the intake of silicon is also indicated for suppression of the arteriosclerosis and improvement in the immune function. However, until now objective verification hardly was done. Then, in this study, we first performed tensile test on bone and blood vessel of rats of 13 by the silicon and rare sugar intake, and the stress-strain characteristic was analyzed, and the dynamic strength of bone and blood vessel was evaluated. As the result, the strain in the maximum stress of blood vessel of the silicon intake group, rare sugar intake group and both intake group were significantly bigger than the control group. The rupture stress of the radius of the silicon intake group was significantly bigger than that of the control group. By the rare sugar intake, it was proven that the rupture stress of the ulna radius was significantly bigger that the control group.

Key words dietary silicon intake, bone, blood vessel, Stress-Strain, rare sugar

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This articlc is a technical report without peer review, and its polished and/or extended version may be published elsewhere.

Copyright ©2014 by IEICE

1. はじめに

米国の代表的な疫学研究の一つで1940年代からスタートした「フラミンガム研究」,その子供を対象とした1970年代からスタートした「フラミンガム子孫研究」と呼ばれる長期間の地域コホート研究から,ケイ素はカルシウム以上に骨を強くする可能性があることが示された[1],[2].米国と英国の共同研究グループは,フラミンガム子孫研究の被験2846人を対象に,食生活からケイ索摂取量と股関節部位の大腿骨頸部,転子など4つの部位と腰椎部での骨密度(Bone Mineral Density; BMD)を計測し,その関連を調べた結果,ケイ素摂取量とBMDに密接な相関関係があることを明らかにした.男性や閉経前の女性では,ケイ素摂取量が多いほど大腿骨頸部のBMDが高いことが判明し,最もケイ素摂取量が多い(1日40mg以上)グループは,最も摂取量が少ないグループ(1日14mg未満)より,BMDが10%近く高いことが明らかにされた.カルシウム摂取した場合の差が高々5%であったことから,ケイ素摂取量の差がBMDに及ぼす影響は,カルシウムより大きいと結論づけている[1].

さらに,ケイ素の摂取は,動脈硬化を抑制し,免疫機能を向上させることも示唆されている[3],[4].蒸留水と水溶性珪素を一定期間飲ませたラットの脾臓と胸像のリンパ球数を調べた結果,水溶性珪素を飲ませたラットは,リンパ球数が増加し,免疫機能が向上していることが示された [3].

 一方,希少糖については,D-プシコースが,ケイ素と同じように,動脈硬化の抑制に影響を与え,体脂肪の蓄積を抑える[5], 食後の血糖値の上昇を抑える[6],抗肥満作用など[7],[8]が指摘されている.このように,臨床的な検証は徐々に進められているものの,応力ひずみ特性など力学的強度の評価はほとんどされてこなかった.

 以下2.で,力学的強度評価のための応力ひずみ特性を概説し, 3, 4.で,ラットの血管と骨の引張試験による応力ひずみ特性を解析した結果を示す.

 2. 力学的強度評価

 2.1 応力-ひずみ [9], [10]

 Fig.1 に示すように,一般に,材料(物体)に,引っ張るような外力Pが作用すると,引張方向に垂直な断面には,外力Pに対して抵抗する内力が働く,物体の長さが十分長く,断面が物体の両端から十分に離れていれば,この内力は,断面内に一様に分布し,かつ内力の総和は外力Pに等しい.この場合,単位面積当たりの内力を応力(stress)σといい,断面積をAとすれば,

  (1)

という関係がある.工学分野では,外力のことを荷重(load)ということが多く,引張を与える外力を引張荷重,引張荷重に対応して,応力は引張応力となる.

一方,物体は力を受けると変形し,一般に変形の程度は場所によって異なる. Fig.2に示すように,変形前の長さをℓ0, 変形後の長さをℓ,長さの変化分を△ℓとすると,ひずみ(strain)

εは,この物体内各場所の変形の程度を表す量,つまり,単位長さあたりの伸びとして,

   (2)

と表される.

図1 垂直応力

Fig.1 normal stress

図2 ひずみ

Fig. 2 strain

2.2 応力-せん断ひずみ [11]

曲げ荷重(bending load)を受け持つ細長い棒状の部材は,はり(beam)と呼ばれる.今回用いた試料の骨に使用された治具により,Fig.3(a) のように,両端支持はり,集中荷重Pを中点1点で受ける場合を適用する.曲げにおける引張応力,つまり,破断応力σf [N/mm2] は,曲げモーメントMfと断面の 形状によって決まる断面係数(section modulus) Zを用いて, 

 [N/mm2] (3)

と表される.ℓは,試料のスパンの長さを表し,曲げモーメントMfは,両端支持はりで中点で集中荷重を受けるとすると, 

  (4)

となる.

したがって,荷重(load) Pから式(4)より,曲げモーメントMfが得られ,各試験片の物理的性状から断面係数Zが算出できるため,式(3)より破断応力σfが得られる.

一方,はりのたわみ,つまり,せん断ひずみは, Fig.3(b)における角度γとして与えられる. せん断ひずみγは小さい時には,引張によって生じたたわみ量をλとすると, 

図3 (a) 両端支持はり, (b) せん断ひずみ

Fig. 3 (a)fixed beam. (b)Shearing strain

  (5)

と近似される.

 2.3 応力-ひずみ線図

 ところで,引張試験は,他の圧縮,曲げ,ねじり試験などの静的試験とともに,材料の強さに関する基礎資料を得る目的で広く実施されている材料試験の一つである.円形または長方形断面の平行部分を持つ試験片の軸方向に引張荷重を加え,その時の荷重と伸びとを測定するものである [11]. 

引張試験によって測定した荷重と伸びを2.1 により応力とひずみに変換し,応力を縦軸,ひずみを横軸にとって,応力とひずみの関係を表した図を応力-ひずみ線図(stress-strain curve) という.同様に,はりの曲げ応力,はりのたわみによるせん断ひずみも,2.2により応力とひずみの関係として応力-ひずみ線図を描くことができる. 

 応力-ひずみ線図は,応力が小さいうちはひずみは応力に比例して増加し,その後応力が最大となる点を経て,最終的な破断に至る.一般に,引張強さ(tensile strength) と言われる最大 となる引張応力は,血管や骨では,金属材料とは異なり,破断時と同時に計測される.

3. 実験

3.1 試料

実験には, 10週齢のSPF (Specific Pathogen Free)のSle:Wistarラット(日本エスエルシー株式会社)の雄13匹が使われた.これらのラットは,以下のように飲み水のみが区別され,50日間飼育された.1群(コントロール群,CT, 3匹)は,水道水のみ,2群(ケイ素摂取群,SI, 3匹)は,飲み水に10%のケイ素が加えられた.3群(希少糖含有シロップ摂取群, RS, 3匹)は,飲み水に10%の市販のレアシュガースウィートが加えられ,4群(ケイ素希少糖含有シロップ摂取群, SIRS, 4匹)は,飲み水に10%のケイ素と10%の市販のレアシュガースウィートが加えられた.各ラットは,飼育期間中,これらの飲み水を自由にいくらでも飲むことができる.

ケイ素は,「umo濃縮溶液」(市販品)の水溶性珪素濃縮溶液が使用された.「umo濃縮溶液」の100ml 中に,ケイ素8,370ppmが含まれる.また,市販の「レアシュガースウィート」の成分は,ぶどう糖D-グルコース44%, 果糖D-フルクトース31%, 希少糖19%程度,オリゴ糖類4%であり,希少糖の内訳は, D-プシコース6%, D-マンノースとD-ソルボースで10%程度, D-

図4 引張試験機と骨専用治具

Fig.4 tension test and jigs of bone

タガトースとD-アロースで3%程度である. 

飲み水とは別に共通の餌として,「ラボMRストック」(日本農産工業株式会社)の粉末が,1日1匹当たり15g摂取を目安に,手間を省くため,1日おきに30gが与えられた.

50日の飼育後,それぞれのラットから血管と骨が摘出された. 血管は,腹部大動脈を,骨は,上肢より,上腕骨(Humerus),尺骨・橈骨(Ulna, Radius),下肢より大腿骨(Femur),脛 骨・腓骨(Tibia, Fibula) を左右1本ずつ摘出された.ただし,脛骨・腓骨は,引張試験時に,腓骨は取り除かれ,脛骨のみで計測された.

各試験片は,引張試験計測の都度,応力ひずみ特性の解析に用いるための物理的性状などの実測値が計測された.血管は,厚さt,幅d,長さ(チャック間距離)L0である.骨の試験片は, 計測者が,どの断面形の断面係数Zを用いるかを決定し,断面係数に必要な厚さt,直径d,底辺b,高さhが計測された,各骨の断面形は,上腕骨は三角形, 尺骨は長方(板状),橈骨は円,大腿骨は円筒,橈骨は円筒,三角形が半々であり,それら断面形の面係数Zは,文献 [11]に示されている値を用いた. さらに,断面が三角形の断面係数は,計測時に試験片が動くことを考慮に入れ,底面での断面係数と頂点での断面係数を合わせて二分した.

3.2 実験方法

引張試験機は,変位制御によるもので,小型卓上試験機(リトルセンスター,型式LSC-1/300)のねじ式一軸試験機(JTトーシ株式会社)が用いられた.センサーは,ロードセルであり,血管を対象とする場合は,50[N]ロードセルを,骨を対象とする場合は,500[N]ロードセルが用いられた.引張速度は,血管,骨いずれの場合も10[mm/min]とし,ロードセルに応じて,最大試験力,オーバーロードなどのパラメータを適切に設定した.

引張試験治具は,平行式チャックに,骨の場合は,骨専用に製作された治具が用いられた.Fig.4に示すように,下部のチャックに垂直に取り付けられた専用の治具の中央には,10[mm]の隙間と,治具の両端には,直径8[mm]の穴があり,両端の穴と隙間との中間に骨を置く,上部のチャックに垂直に取り付けら

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図5 応力-ひずみ線図の1例, (a)血管, (b)尺母・橈骨

Fig. 5 A tipical example of stress-strain curve,

(a) blood vessel,(b) Ulna, Radius

れた厚さ2[mm]のU字型の治具は,試料の中央を囲むように設置し,上部の治具を上部に引っ張ることにより,試料を下から上へ引っ張る方法がとられた.血管の場合は,接着剤で試験片を張り付けたカーボン板(厚さ0.3mm)を上下のチャックに取り付ける.

1回の計測で,試験力(Load), 変位(Stroke)などは,各々最大60,000点まで,CSV形式で1ファイル保存される.計測サンプリング周波数は, 50 [Hz] である.

4. 結果と考察

4.1 応力-ひずみ線図

 3.1で述べた試料に対して,3.2で述べた実験方法による計測値ファイルから, 2.に述べた方法で,応力ひずみ線図を作成する.具体的には,血管は,計測される荷重(load) Pと引っ張られることによる変形後の試料の長さℓから, 2.1の式(1),(2)より,応力ひずみ線図が作成できる.骨の場合は,計測される荷重(load)Pと2.2の式 (3),(4)より,算出できる応力σと計測されるたわみ量λより式(5)を用いて算出されるせん断ひずみγより,応力ひずみ線図が作成できる.

 血管の応力ひずみ線図の一例をFig.5(a)に,尺骨・橈骨の応力ひずみ線図の一例を Fig.5(b)に示す.横軸は,ひずみε, あるいはせん断ひずみγ,縦軸は,応力σ[N/mm2]を表す.図中oは,破断時の最大ひずみεmax,あるいはせん断ひずみγmax, 応力σmaxを表す.血管の応力ひずみ線図において,血管のひずみ量が小数点以下第2位までの計測に限られていたため,離散的な値となっているが,応力ひずみ線図の典型的な形状である.

応力ひずみ線図から読み取れる,破断時の最大応力σmax [N/mm2]. ひずみ(伸び)εmax などと,試料の実測値,直径d[mm],断面係数Z[mm3]など,様々なパラメータを用いて,各グループとコントロール群との間の有意差の有無を検討した.

コントロール(CT)群, ケイ素摂取(SI)群,希少糖含有シロップ摂取(RS)群,ケイ素希少糖含有シロップ摂取(SI+RS)群のそれぞれのパラメータの平均と標準偏差(Mean±S.D.)とサンプル数,及びコントロール群と各グループ間の統計的検定を行った際のP値をFig.6~12にまとめて示した. P値が小さいほど,有意にグループ間の差があることを表す.

図6 血管の最大応力 σmax時のひずみ(伸び) εmaxの比較

Fig. 6 Compare strain to the max stress of blood vessel.

4.2 血管の応力ひずみ解析

血管の解析では,Fig.6に示すように,最大応力時のひずみ(仲び)εmaxが,顕著に有意差が表れた.最大応力時のひずみ(伸び)εmaxが大きいことは,血管が良く伸び,やわらかい血管であることを表わす. 

コントロール(CT)群の最大応力時のひずみ(伸び)εmaxに対して,ケイ素摂取(SI)群,希少糖含有シロップ摂取(RS)群,ケイ素希少糖含有シロップ摂取(SI+RS)群それぞれに,有意差(P =0.0391,P=0.0170,P=0.0044)があった.つまり,ケイ素の摂取,希少糖含有シロップの摂取,さらにはその両方を摂取することにより,水道水のみの群より,破断までにより有意に血管が伸びることを意味する.つまり,ケイ素,希少糖含有シロップを摂取することにより,動脈硬化が抑制されていると考えられる.

4.3 骨の応力ひずみ解析

骨の解析では,橈骨または,尺骨・橈骨の破断時の破断応力σmaxに有意差が見られた. 尺骨・橈骨は,それぞれを切り離さずに引張試験を行ったため,応力ひずみ特性は,尺骨・橈骨のそれぞれの断面係数Zを合算して解析した.

まず,尺骨・橈骨の破断時の破断応力σmaxは,Fig.7に示すように,RS群とSI+RS群が,CT 群より有意に大きかった(P=0.0326,P<10-4)が,SI群には,有意差が無かった(P=0.1752).破断時の破断応力σmaxが大きいということは,尺骨・橈骨が強いということを意味している.つまり,希少糖含有シロップ摂取群または,ケイ素希少糖含有シロップの摂取の群は,水道水のみの群より,尺骨・橈骨が強いことを意味する.

そこで,尺骨と橈骨ではどちらがその破断時の破断応力σmaxに影響を与えているかを調べるため,尺骨の断面係数Zと橈骨の断面係数Zそれぞれに対する破断時の破断応力σmaxを調べた.尺骨の断面係数Zのみから求めた破断時の破断応力σmaxについては,SI群,RS 群,SI+RS群とCT 群との間には,有意差はなかった.次に, 橈骨の断面係数Zのみから求めた破断時の破断応力σmaxにおいては,Fig.8に示すように,SI群は,CT群より,有意に破断時の破断応力σmaxが大きかった

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図7 尺骨・橈骨の破断応力σmaxの比較

Fig. 7 Compare rupture stress of Ulna, Radius.

図8 橈骨の破断応力σmaxの比較

Fig. 8 Compare rupture stress of Radius.

図9 橈骨の直径dの比較

Fig. 9 Compare diameter of Radius.

図10 上腕骨の破断応力σmaxの比較

Fig. 10 Compare rupture stress of Humerus.

図11 大腿骨の破断応力σmaxの比較

Fig. 11 Compare rupture stress of Femur.

図12 脛骨の破断応力σmaxの比較

Fig. 12 Compare rupture stress of Tibia.

(P=0.0039).同様に,RS群, SI+RS群においても, CT群より,有意に破断時の破断応力σmax が大きいことが示された(P=0.0076,P=0.0095).つまり,ケイ索または,希少糖含有シロップを摂取した群は,水道水のみの群より,橈骨が有意に強いことを意味する.興味深いことに, 橈骨の直径は,Fig.9に示すように,SI群,RS群,SI+RS群の直径は,CT群の.直径に比べて有意に小さいのである(P < 10-6, P < 10-5, P=0.0037). 

これらの結果より,橈骨は,破断時の破断応力σmaxに大き

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く影響を与えており,橈骨の直径が有意に小さいにも関わらず,骨が強いことが示された.しかしながら,尺骨と橈骨のそれぞれの断面係数Zを単純に合算して求めた破断時の破断応力σmaxだけでは求められない,複雑な骨の構造や仕組みを考慮した曲げモーメント,非対称曲げ,さらには,組み合わせ応力ひずみ特性を解析する必要がある.

 さらに,上腕骨の破断時の破断応力σmaxは,Fig.10に示すように,CT群とRS群,及びCT 群とSI+RS群に有意差がある(P=0.0363,P=0.0135)ものの,CT群とSI罪とでは,わずかの差で有意差が無かった(P=0.0956).

 大腿骨の破断時の破断応力σmaxは,Fig.11に示すが,CT群との間には,有意差が見つからなかった.さらに,脛骨の破断時の破断応力σmaxは,Fig.12に示すが,同様に, CT群との間には,有意差が見つからなかった.

 これらの結果から,ケイ素摂取群,希少糖含有シロップ摂取群,ケイ素希少糖含有シロップ摂取群の血管の最大応力時の歪(伸び)は,コントロール群より,有意に大きいことが示されたことは,ケイ素の摂取,希少糖含有シロップの摂取,さらにはその両方を摂取することにより,水道水のみの群より,破断までにより有意に血管がのびることを意味する.つまり,ケイ索の摂取,希少糖含有シロップの摂取により,動脈硬化が抑制されていると考えられた.また,ケイ素摂取群の橈骨の破断時の破断応力は,コントロールより有意に大きく,希少糖含有シロップを飲用したラットの尺骨橈骨の破断時の破断応力は,コントロール群より有意に大きいことが示された.つまり,ケイ素摂取,希少糖含有シロップの摂取により,より尺骨橈骨が強くなったと考えられた.

 大腿骨,上腕骨など,比較的太い骨には,破断時の破断応力としての有意差が見つけらず,尺骨橈骨など,比較的細い骨にその有意差があり,さらに,拍動を繰り返す血管にその有意差が顕著に表れた.ケイ素摂取,希少糖含有シロップの摂取は,日常的によく動かす血管や細い骨により吸収されて,その影響が先に現れたのではないかと推測する.それらの摂取期間が長くなれば,上腕骨や大腿骨などの太い骨にも影響が表れてくると推測される.

5. むすび

本研究では,ケイ素及び希少糖の飲用摂取によるラット13 匹の骨と血管の引張試験を行い,応力ひずみ特性を解析し,骨と血管の力学的強度を評価した.その結果,ケイ素摂取群,希少糖含有シロップ摂取群,ケイ素希少糖含有シロップ摂取群の血管の最大応力時のひずみ(伸び)は,コントロール群と比較して,有意に大きいことが分かった.つまり,ケイ素の摂取,希少糖含有シロップの摂取さらにはその両方を摂取することにより,水道水のみの群より,破断までにより有意に血管が伸びることを意味しており,ケイ素摂取,希少糖含有シロップの摂取により,動脈硬化が抑制されていると考えられた. 

また,ケイ素摂取群の橈骨の破断時の破断応力は,コントロール群より有意に大きく,希少糖含有シロップを飲用したラットの尺骨橈骨の破断時の破断応力は,コントロール群より有意に大きいことが分かった.つまり,ケイ素摂取,希少糖含有シロップの摂取により,より尺骨検討が強くなったことが示された.ケイ素摂取だけでなく,希少糖の摂取により,動脈硬化の抑制と骨を強くする相乗効果が期待される.

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